不登校と知能検査WISC-Ⅳ
息子の不登校のことで悩み学校のスクールカウンセリングを利用するようになって間もなくのころ、カウンセラーの先生からWISC-Ⅳ(ウィスク4)という知能検査を受けてみることを勧められました。
なぜ知能検査WISCを受けようと思ったのか
実を言うと息子は、幼稚園時代にも担任の先生から発達検査を受けることを勧められたことがありました。その当時の私は、すくすくと元気に楽しそうに毎日過ごしている息子の様子を見ていて必要性を感じなかったため、検査を受けることはしませんでした。
それが中学生になり、本人が不登校で悩み苦しむようになりました。「本人の特性を知れば、適切なサポートの仕方がわかるかもしれませんよ」と、カウンセラーの先生から言われて検査を受けてみようという気持ちになりました。息子のことをもっと理解して彼の現状を救いたい、母親としてしっかりと構えていたいという願いがあったからです。
検査を受けることを本人にどう伝えるか
さて、検査を受けるには本人に納得してもらわなければいけません。強引に連れて行くことはできませんので、なんのために検査をするのか丁寧に説明をしました。病院での検査となると、自分が病人扱いされているのかと感じて嫌な思いをさせてしまうかもしれません。
私は「検査」という言葉は使わず、「自分はどういったタイプなのかを知るためのテスト」と伝え、なぜ私がこのテストを受けることをすすめるかについては、あなたを助けたい、あなたに合うサポートをしていきたい、と説明して納得してもらいました。
結果が出るまでの長い道のり
検査にかかる時間には個人差がありますが、多くの問題に回答していくため、1時間~2時間くらいはかかるかもしれないと言われていました。実際のところ息子は全ての検査を終えるまでにかなり時間がかかり、午前10時の予約で検査が終了したのは午後1時でした。こんなに長い時間ほぼ休憩無しで彼にとってはたいくつなテストを受けれるなんて、本当によく頑張ったと思います。
検査結果は後日ということで、その結果が出るのにも1ヶ月以上かかりました。予約を入れたのは3ヶ月前、結果が出るまで1ヶ月、思えば4ヶ月間の長い道のりでした。
WISC-Ⅳでわかること
WISC-Ⅳは5歳から16歳の子どもが受けることのできる知能検査です【言語理解】【知覚推理】【ワーキングメモリー】【処理速度】の4つの項目について検査しその結果から全体的なIQがわかるようです。
4つの項目について
4つの項目からどういったことがわかるのかというと…
言語理解
語彙力や言葉に関する知識、言葉から推理する力や言葉での表現力などがわかります
知覚推理
目で見た視覚的な情報から物ごとを理解したり全体を推測したりする能力がわかります
ワーキングメモリー
耳で聞いたことを一時的に頭の中に記憶しておく力がわかります
処理速度
目で見た情報を正確に見分けて分類したり、事務的に単純作業を数多くこなす能力がわかります
指標の差が20以上あると生きづらさを感じる
【言語理解】【知覚推理】【ワーキングメモリー】【処理速度】の4つの検査結果の数値は、多くの子の場合だいたい似たような数値になるそうなんですが、得意な項目と不得意な項目に20以上の差があると生きづらさを感じるそうなのです。
息子の場合、言語理解が高い数値でした。知覚推理とワーキングメモリは平均値。それに対して処理速度能力が平均以下であり、言語理解との差は47もありました。20以上で生きづらさを感じるということなのに47もある、このアンバランスのせいで息子は人にはわからない生きづらさを抱えていたのかもしれません。
発達の凸凹を抱えた子が不登校になってしまうことは珍しくないようです。発達の凸凹は生まれ持ったもので治療すれば治るものではなく、治そうとするものでもありません。むしろ、凸凹があるからこそ人とは違った素晴らしい世界が広がる可能性があるのです。
WISC-Ⅳの結果からわかった息子の特長
検査結果からわかった特長がいくつかありました。そのうち以下の2つの特長に関しては、「あぁ、そうだよね」と大きくうなずけるものでした。
完璧主義
息子は昔から完璧主義で、完璧にできない自分は誰からも評価されないと思っているので、何でも完璧にしようとすごく努力をします。でも、自分が思っている合格ラインに届かなかったとき、「あぁ、あんなに頑張ったのに、俺は能力がないダメなやつだ」と、自信をなくして、今まで頑張ってきたことを「俺には無理」と、すっぱりやめてしまうのです。だから、何やってもダメだ~…と落ち込んでしまいます。
彼は自分の設定する合格ラインが高すぎるんです。100点目指して100点じゃなきゃダメなやつだと思ってしまうなんて、しんどすぎますよね。
過集中
息子はひとつのことをやりはじめると熱中しすぎて、周りのことが見えなくなってしまうことがあります。ご飯を食べること、寝ることさえ忘れてしまうほどです。
息子が今、今熱をあげているもの…それはオンラインゲーム『Fortnight』です。このままプロゲーマーにでもなるんではないかと思うほどメキメキと上達しており、それなりの大会成績も残してきています。現在は、どうやって知り合ったのかは知りませんが、プロの人と一緒に毎日練習をして腕を磨いている日々です。息子はしばらく前に、プロの人と仲良くなりたいと言っていました。それがいつの間にか実現しているとは、素晴らしい力だと私は思います。
WISC-Ⅳを受けてみてよかったこと
臨床心理士の先生との面談で息子への具体的なサポート方法について細かく丁寧にアドバイスをいただきました。
息子の完璧主義や過集中は彼の特長だと理解はしていたものの、それに対する具体的なサポート方法を理解していませんでした。
◆目標を細分化・見える化する
例えば“勉強の遅れを取り戻す!”ということが目標なら、
・どんな勉強方法があるか調べる
・どうやって勉強するか決める
・いつ勉強するか決める
・10分だけ勉強する
など簡単にクリアできそうな目標に分けて、少しずつスモールステップで進めていくようにします。小さな目標が決まったら、それを『することリスト』として紙に書き出して見えるように貼っておき、できたらチェックを入れていきます。することリストの項目は、たくさんありすぎるとわからなくなってしまうので通常3つ、多くても5つまでにしています。
◆自分の役割や仕事を先にやる
細分化して紙に書き出した簡単な目標が全部守れたら、翌日のゲームについては寝る時間と食事の時間さえ守ればあとは干渉していません。逆に目標を守れなかった日は、翌日に目標をクリアするまでゲームはしないというルールにしています。このルールも親の押しつけではなく、息子本人に考えてもらったものです。
◆親の役割として大切なのは『認めること』と『感謝すること』
親の役割として大切なことは『認めること』と『感謝すること』だと私は思っています。子どもの考え方や興味関心をもっていることを否定せず「そんなふうに考えているんだね」と認めたり、たとえ失敗したとしても「頑張ったよね」と過程を認めたりすること。また、子どもがお手伝いをしてくれることを当たり前とせず「ありがとう」と感謝したり、存在自体に「元気でいてくれてありがとう」と感謝することだと思います。
認められること、感謝されることは自信につながるからです。
まとめ
WISCの検査を受けて先生からアドバイスをもらったことで、私が息子にできるサポートが明確になりました。また、息子自身が自分の脳のタイプを知ったことで、自分という人間について少し理解することができたようです。